医療データ活用ガイドDPC・レセプト分析と経営事例
最終更新日:2026/01/26
目次
- DPCデータや電子カルテ、レセプトデータが院内に蓄積されてはいるが、正直、何から手をつけていいか分からない
- データ分析が重要とは聞くが、結局Excelでの集計作業に追われ、具体的な経営戦略に活かせていない
多くの医療機関の企画室・経営企画部門の方々から、このようなお悩みをよく伺います。
第63回日本医療・病院管理学会学術総会でも、「身近にある医療データを医療・病院管理に活かす」がメインテーマとして掲げられました。 今や、経験と勘に頼った病院経営から、データに基づいた戦略的意思決定(データドリブン)への転換は待ったなしの経営課題です。
この記事では、病院内に存在する主要なデータを整理し、それらを活用するための実践的なステップ、そしてExcel集計の「次」に進むための具体的な活用事例を、学会の最新動向を踏まえて解説します。
なぜ今、医療データの活用が経営課題なのか?
病院経営を取り巻く環境は、かつてないほど厳しさを増しています。
「地域医療構想」による機能分化・連携の推進、「医師の偏在」や「働き方改革」によるリソースの制約、そして終わりの見えないコスト高騰――。
こうした外部環境の変化に対応し、持続可能な病院経営を実現するためには、自院の立ち位置を客観的に把握し、戦略を立てる必要があります。
その戦略の「羅針盤」となるのが、日々の診療で生み出される「RWD(リアルワールドデータ)」です。 これまでは主に診療報酬請求や監査のために「ためていた」データを、これからは「経営資源」として積極的に活用する視点が求められています。
病院にある「データ」と、それぞれで「できること」
まずは、院内にどのようなデータ資産が眠っているのか、その特徴と可能性を表で整理してみましょう。
| データの種類 | 主な内容 | 分析で「できること」の例 |
|---|---|---|
| DPC |
様式1 患者情報(郵便番号含む)、傷病名、入退院日 EFファイル 日々の診療行為(投薬、注射、処置など) |
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| レセプト |
医事会計システムで作成される診療報酬請求情報。(NDB, KDBなど院外DBとの連携も) |
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| 電子カルテ |
医師の所見、看護記録、検査結果、バイタルサインなど。ベンダー独自仕様が多く、標準化が課題。 |
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医療データ活用の実践ステップと「課題」
データを活用する流れは、大きく3つのステップに分けられます。
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STEP 1収集・集計(データを見る)
DPCデータやレセプトデータを抽出し、Excelなどで集計する。
例診療科別の患者数、DPCコード別の平均在院日数を出す -
STEP 2分析・可視化(データを分析する)
集計結果をグラフ化し、他院や過去の自院と比較する。
例QI(クオリティ・インディケーター)を算出し、ベンチマークと比較する -
STEP 3戦略立案・実行(データを戦略に活かす)
分析結果に基づき、具体的な業務改善や経営戦略を立てる。
例在院日数が長い要因を特定し、地域連携パスを見直す
しかし、多くの病院がSTEP 2の「分析・可視化」の段階で壁にぶつかっています。
データ活用の「課題」=集計しただけでは、次の一手が見えない
学会の発表でも、現場の課題として「データを単なる記録としてではなく、現場改善や戦略的運営につなげる」ことの難しさが指摘されています。
- DPCデータの郵便番号を集計しても、膨大な郵便番号の羅列になり、どの地域に課題があるのか直感的に分からない。
- Excelでのグラフ化では、「地域ごとの特性(人口や競合)」といった外部要因と掛け合わせた分析が難しい。
- 結果、分析が「報告書を作って終わり」になり、具体的なアクション(例地域連携室の訪問先見直し)につながらない。
この「集計から戦略への壁」を打ち破る最も強力な手法が、データを「地図」で可視化することです。
活用事例 Excelの次へ。データを「地図」で可視化するメリット
医療は本質的に「地域」で提供されるサービスです。 それにもかかわらず、データ活用はExcelによる数値集計に留まり、“地域を見ずに”意思決定せざるを得ないケースが少なくありません。
患者データ、特に自院患者の「居住地」やDPCデータに含まれる「郵便番号」と「地図(GIS)」を組み合わせることで、Excelでは見えなかった自院の姿が浮かび上がります。
メリット1 患者流入の「穴」がわかる(患者商圏分析)
DPCデータの郵便番号情報を地図上にプロット(マッピング)するだけで、「どの町丁目から患者さんが多く来ているか」「逆に、すぐ近くなのに全く来ていないエリアはどこか」が一目瞭然になります。
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活用事例
自院の患者流入状況をヒートマップで可視化。これまで連携が手薄だった「穴」となっているエリアを発見し、地域連携室が重点的に訪問する戦略を立てた。
詳しくは『DPCデータの「郵便番号」は“宝の山”!患者流入を地図で可視化する超実践的分析テクニック』へ
メリット2 地域の「特性」と重ねて、戦略を立てられる
地図化の真価は、自院のデータ(患者数)と、公的な統計データ(例:地域の高齢者人口)を重ね合わせることにあります。
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活用事例
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分析前「A地区は患者が少ない」
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分析後地図上で国勢調査データと重ねた結果、「A地区はそもそも高齢者人口が少ない」のではなく、「競合のB病院がシェアを独占している」ことが判明。
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次の戦略A地区に対しては、B病院と重複しない自院の強み(例特定の疾患治療)を前面に出した広報戦略に切り替える。
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メリット3 「地域医療構想」の客観的な根拠になる
「地域医療構想」の調整会議では、自院の役割を客観的データで示す必要があります。
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活用事例
自院の患者シェアや流入元を地図で可視化し、「当院は〇〇医療圏の急性期医療の〇割を担っており、特に△△地区からの患者流入が多い」といった具体的な根拠資料として提示する。
まとめ 医療データ活用は「可視化」で始まる
膨大な医療データを前に立ち止まってしまう最大の理由は、「何のために、何を分析すればよいか」が見えないことです。
その第一歩として、まずは「自院の患者さんが、どこから来ているのか」を地図で可視化することから始めてみませんか? Excelの表では見えなかった「地域の現実」と「自院の立ち位置」が明らかになり、次の戦略(アクション)が驚くほど明確になります。
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- DPCデータと地図を組み合わせる重要性は分かったが、自院に分析できる人材がいない…
- Tableauを導入したが、どう活用すればいいか分からない…
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